KDDI が提供する MVNO サービス「povo 2.0」は、料金プランをゼロから自分で作ってスマホを運用でき、その自由さと明瞭会計の精神がスマホユーザーの心を掴み、現在、人気急上昇中ですが、「基本料ゼロ」から始められる点も大きな魅力で、本当に基本料ゼロでスマホを使い続けられるのか実際に検証してみました。
そもそも povo 2.0 には SIM の購入時に選択しなければならない基本プランというものがなく、必要に応じて「トッピング」と呼ばれるパッケージを購入することで、使用可能なデータ通信量を確保し、通話やその他のオプション機能を利用します。つまり、トッピングを何も購入しなければ毎月 0 円で済むということです。ここが他の SIM サービスとは大きく異なる povo 2.0 の特徴となります。
しかしながら、データトッピングを何も購入しない場合、SIM の通信速度が上下 128kbps に制限され、0 円運用が可能なことはその通りですが、スマホの使用は大きく制限されることになります。このことは povo 2.0 の公式サイトにきちんと明記されているので心得ている方は多いと思いますが、問題は 128kbps でどこまで使えるのか、だと思います。
結論から言うと、チャットや SNS の投稿閲覧など、主にテキストデータをやり取りするアプリならスムーズとは言えないまでも殆どストレスなく利用でき、電話機能を含めて人と通信手段を確保することに用途を限定すれば 0 円運用の povo 2.0 でも十分戦力になります。povo 2.0 は eSIM を発行しており、アプリ上で契約手続きが完結するので、即日開通も余裕。費用をかけずにバックアップ回線を調達できますし、サービス登録のために新しい電話番号が必要という方にうってつけの SIM サービスとも言えます。
スピードテストを実施したところ、仕様上の 128kbps より少し低い結果が出ましたが、速度は地域や場所によって変わるのでなんとも言えません。
128kbps というと、2MB の画像データの送信に 25 秒以上もかかる速度です。このことから予想できると思いますが、動画配信アプリではストリーミング映像のバッファリングに数十秒もかかり、場合によっては低速過ぎて読み込みエラーとなり視聴すらできないこともあります。また、最近のアプリは画像やグラフィック要素を多く含んでいることもあり、軽量アプリであってもアプリ画面の読み込みに相当の時間がかかることもあります。
具体的に、128kbps 制限下では次に示すようなアプリの動作内容でした。
●YouTube の場合、ストリーミング画質を 1144p に落とせば 20 秒程度のバッファリングの後、ほとんど途切れることなく視聴できた。それ以上の画質設定だと途切れ途切れとなる。
● Amazon プライムビデオの場合、30 秒のバッファリングの後、読み込みエラーが発生して再生されなかった。
● YouTube Music の場合、音質設定を「低音質」に落とせば殆ど途切れることなく音楽を視聴できるが、バッファリングに 10 ~ 20 秒かかり、アプリ自体の読み込みにも時間がかかるため、アプリの使用においてストレスは多い。
● PayPay の場合、アプリの UI 読み込みは高速だったものの、決済用バーコード・QR コードの読み込みに 30 秒ほど時間を要した。
● Radiko の場合、アプリを起動して 20 秒ほど黒い画面が表示された後、エラーメッセージが表示されアプリを開けなかった。
● Web ブラウザの場合、ページの表示スピードはサイトの構成にもよるが、読み込みが完了するまでに 30 ~ 40 秒かかることが殆どで閲覧はスムーズだと言えない。
ここまではアプリ使用時における速度制限の影響を紹介してきましたが、影響は他にもあり、それはスマホのバッテリー消費量や発熱が増えることです。
というのも、128kbps 制限下では一回あたりの電波送受信に転送されるデータ量が非常に少なく、スマホと基地局との間で電波の送受信回数や接続時間が長くなり、スマホ内部のモデムチップに長時間電力が注がれる結果、バッテリーをより多く消費し、その分、熱を持ちやすくなります。
以上、大きく 2 つの不便さを紹介してきましたが、どちらも 128kbps 制限がかかればどのSIM カードを使用しても起こりうる仕様上の制約であり、 povo 2.0 特有の問題などではありません。