Bluetooth Auracastが注目される理由、公共の場でのリスニング体験を根本から変える将来有望なワイヤレス技術

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Bluetooth はその登場以来普及を続け、今では身の回りの多くの機器に組み込まれており、生活には欠かせないテクノロジの一つとなっています。Bluetooth を使用する目的の代表例はデバイス間の接続をワイヤレス化し、映像や音楽をプライベートに楽しむことですが、Bluetooth の新機能の一つである「Auracast(オーラキャスト)」が公共の場所でのリスニング体験を根本から変える可能性があり、Bluetooth に新たな価値をもたらすとして注目を集めています。

Auracast とは、Bluetooth を使用して単一の送信デバイスから電波範囲内にある不特定多数の受信デバイスに対してオーディオをブロードキャストする仕組みです。つまり、Bluetooth による “放送” を実現します。Auracast に対応したスマホやタブレット、PC、テレビなどの送信デバイスによって放送された Bluetooth オーディオは、Auracast 対応のイヤホンやヘッドホン、スピーカー、補聴器がこれを受信できます。ブロードキャスト方式のオーディオ共有なので事前に送信デバイスとペアリングする必要はなく、ラジオのようにスマホ上でチャンネルを選択すると Auracast による放送を聴けるようになります。このときのスマホは「Auracast アシスタント」として動作し、Wi-Fi のアクセスポイントを選択するかのごとく身の回りの Bluetooth 放送の一覧を確認しチャンネルを選択することができます。

なぜ今 Auracast が取り沙汰されているのかというと、先週米国で開催された CES 2024 ではいくつかの Auracast 対応商品が出展され、それを試した米メディアの記者たちによってその存在と有用性が広く報じられたからです。

Auracast によってもたらされるワイヤレスオーディオの未来、それは次の使用例をお読みになるとイメージでき、ほぼ全員が何らかの形で恩恵を受けることに気付くでしょう。

スポーツバーにおいて複数台のテレビから競技映像が流れている場合、周りは騒々しく、場合によってはテレビの音声は聴き取りづらいかもしれません。そこで Auracast イヤホンを耳に装着しスマホ上でチャンネルを選択すると、好きな競技映像の音声を自分のイヤホンで聴くことができます。

これと同様に、例えば、駅前に設置された大型ビジョンやデジタルサイネージ、役所や病院、ジムといった公共の場所ではそこに設置されたテレビ等の音声を自分のイヤホンで聴けるようになります。もしかすると、映画館でも上映作品の音声を自分のイヤホンで聴ける選択肢が提供されるかもしれません。

テレビ等の音声を聴くこと以外にも、例えば、空港では航空会社のアナウンスが Auracast でブロードキャストされると、それを自分のイヤホンで聴き取ることができれば搭乗案内や登場者の呼び出しを聞き逃すことがなくなるでしょう。

さらに別の例では、国際的なイベントや外国のスピーカーが登壇する講演会では、Auracast を利用して話者の音声や同時通訳音声がブロードキャストされ、それを自分のイヤホンで聴けるようになると思います。

Auracast は何もエンターテイメントを楽しむ目的で導入されたわけではありません。LE Audio の高音質且つ低遅延な特徴を活用して、Bluetooth 補聴器ユーザのリスニングをアシストする役割を担うこともできるでしょう。

Auracast は 2020 年 1 月に Bluetooth SIG によって LE Audio 標準が発表された際にそのオプション機能として導入されました。当時は オーディオ共有” と呼ばれていましたが、それが Auracast に改名されブランド化されたということです。

肝心なことは、どうすれば Auracast を利用できるのかでしょう。Auracast の利用には送信デバイス・受信デバイスともに Auracast への対応が必要で、対応デバイスは 2023 年末になってようやく出始めており、今年以降にはより多くの商品が発売される予定です。実際には今後利用可能になる技術です。

仕様上、Auracast は Bluetooth 5.2 以上をサポートしたデバイスで動作しますが、Bluetooth 5.2 に対応しているからといって必ずしも Auracast を使用できるとは限りません。デバイスによってはファームウェアアップデートが必要になるケースもあれば Bluetooth 5.2 以上に対応している場合でも Auracast を使用できないケースもあります。この点は各デバイスの仕様や販売メーカーの判断による部分が大きいと思われます。最も簡単なのは最初から Auracast への対応を謳った商品を購入することです。対応商品にはパッケージに Auracast のロゴマークがプリントされる可能性が高いので、それが目印となります。

Source : DigitalTrendsBluetooth SIG

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